ライトノベル 扉の外U レビュー

扉の外 2 (2) タイトル 扉の外U
著者 土橋真二郎
イラスト 白身魚
出版 電撃
発売日 2007年5月


執筆者:jade 評価:
修学旅行に行くはずだった高橋進一が目を覚ました時、そこは密室で、しかもクラス全員が同じ場所に閉じこめられていた。
詳しい説明のないまま “ゲーム” が始まり、進一のクラスは訳がわからないままその “ゲーム” に敗北してしまう。
配給を絶たれ、無気力に日々をすごすだけだった進一たちだったが、転機が訪れる。
新しいエリアが発見され、そして次なる “ゲーム” が始まったのだ。
だが今度の “ゲーム” はさらなる過酷な対立を生むモノだった───
第13回 電撃小説大賞<金賞>受賞作第2巻。

時間軸は1巻のあとになりますが、前回の主人公・千葉紀之とヒロイン・和泉玲子は今回登場せず、前回ほとんど名前が出ることがなかった2年8組を中心に物語が進みます。

今回の主人公は8組の高橋進一。
良くも悪くも注目を集める行動を起こす問題児なんだけど、実は感情をコントロール術に長けた計算高い男。
そんな男がたった一人の女の子の前では冷静さを失う設定、それもその女の子が鳥篭に囚われていて彼女を助けるためにゲームに参加するってところが、実に私好みで、読み始めてすぐに物語に引き込まれました。

前回はラストに向かうに連れて物語のテンションが落ちていき、尻切れトンボに終わった感が強かったのですが、今回はラスト直前のクライマックスシーンで最高の盛り上がりを見せ、最後も綺麗にまとめた印象。
ややぎこちなさが感じられた文章もだいぶ柔らかくなり、随所に成長の跡が窺えます。
こういう著者の成長が文章から如実に感じられるからこそ、新人作家の作品は魅力的なんですよね。

前回の主人公は目的意識もなく、そのときのテンションで行動を起こしていたので、物語の焦点がぶれがちでしたが、今回の主人公は一人の少女を助けるという終始一貫した態度をとるため、物語の主旨・構成がはっきりしていて非常に読みやすかったですね。

ヒロインでは、前回から引き続き登場の蒼井が非常に良かった。
前巻を読んで、天使のような振る舞いが実は演技だと知っているからこそ、いつ高橋に心を開いて本性を見せるのか、ドキドキしながら見ていたのですが、まさかあそこで見せるとは…
本性を見せたあのセリフと、その直後の笑顔。
このシーンは何度読んでもゾクゾクしちゃいます。

そしてもう一人、前回から継続して登場のヒロイン・正樹愛美からは相変わらず胡散臭さが漂っていました。
結局、今回も馬脚は一向にして現さず、最後までみんなの女神であり続けた彼女が、今後どういう形で物語にかかわってくるのか、非常に気になるところですね。
彼女視点で物語描かれると盛り上がることは必至なんですが、それは物語のクライマックスまで引っ張るだろうなぁ…

個人的には水野由香が好きですね。
ホント、この子は報われないんですよ。
聡い子なので高橋の気持ちに気付いており、巻真希のように露骨に好意を示すことはできず、おまけに運悪く弱者の立場に追いやられたため、他のクラスメイトから酷い仕打ちを受けることになるし…
私が高橋なら間違いなく水野さんに走ると断言できるね。
水野さん可愛いよ、可愛いよ水野さん。

純粋な恋愛ものではないのだけれども、恋は盲目を地で行く高橋の言動から、蒼井への想いの強さが伝わってくるため、前回以上に恋愛色を強く感じさせる内容でした。
好きな女の子を助けるために他のすべてを犠牲にする高橋の行動は、決して褒められたものではなく、とても真似できないのだけれども、だからこそ強く心を惹き付けられるものがありました。
やはり主人公が魅力的に映る作品はいいですね。
釣り橋効果に流されることなく、蒼井への想いを貫いた高橋の姿は、非常に好感が持てました。


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